産婦人科
外来担当医
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診療内容・特徴
当院は地域周産期センターとして、2007年12月に分娩を中止しておりましたが、2014年4月より分娩も含めた産婦人科診療を再開しました。他科との連携によるハイリスク妊娠・分娩(前置胎盤やPIH(妊娠高血圧症候群)、双胎妊娠、子宮内胎児発育障害など)をはじめ、正常妊娠の出産まで幅広く対応して参ります。また、当院では希望者、または母体合併症で必要と判断される患者様には硬膜外和痛分娩を行ってします。
WHO/UNICEFの共同声明でもある「母乳育児成功のため10か条」に沿ってケアさせていただきます。無痛分娩や可能な限り産後の育児やメンタルサポート、乳房ケアの対応もいたしております。現在のところ分娩制限は行っていません。
NICUは6ベッドのみですが、可能な限り対応させていただきます。
新生児の入院に際しては、小児科チームと連携して、母子分離を最小限にとどめます。
一般産婦人科診療、子宮筋腫や卵巣腫瘍など、良性腫瘍や悪性腫瘍に対する治療(手術や抗癌剤治療、放射線治療)も手がけており、手術に関しては可能な限り身体に負担が少なく、入院期間が短い腹腔鏡手術を行っております。進行癌の症例は、状況により他の専門施設へ紹介させていただく場合がありますので、ご承知おきください。
また、不妊症に関してART(体外受精・顕微授精などの補助生殖医療)は行っておりませんが、原因精査やタイミング治療までは対応いたします。
セカンドオピニオンも行いますので、事前に電話でお問い合わせください。
産科、婦人科、新生児について、より高度な医療が望ましい場合は、連携する高次医療施設への紹介を行っております。
紹介先の医療機関:信州大学医学部附属病院、長野県立こども病院、長野市民病院、長野赤十字病院、佐久総合病院など。
◎無痛分娩について
信州上田医療センターでの無痛分娩について
※上田市外から無痛分娩を希望される方へ
出産後、赤ちゃんの入院・治療・検査等で遠方から来院してもらう場合がありますのでご了承ください。
赤ちゃんの状況により一緒に退院できないこともありますのでご理解お願いいたします。
◎骨盤位に対する胎児外回転術について(2020/12/1~)
骨盤位に対する管理については、日本産婦人科ガイドライン産科編2020では骨盤位でも経膣分娩のリスクを理解していただいた上、習熟した医師が緊急帝王切開がいつでも対応できる施設が施設で行うことが勧められています。当施設では人的な部分で常に習熟した医師が対応 できるとは限らないため、基本的には骨盤位の経膣分娩は行っていませんが、可能な限り骨盤位による選択的帝王切開数を減少させ、骨盤位と診断されている患者様に経膣分娩が選択できる 方法として外回転術を御案内させていただきます。
対象の患者様に関しては、下記に記しますが当院かかりつけのならびに他院にかかりつけで骨盤位と診断されている患者様に対して行わせていただきます。他院にかかりつけの患者様に関しては、外回転術を施行し処置後経過が問題なければかかりつけ医へ戻られ、出産管理をしていただく事で問題ありません。
【骨盤位に対する外回転術の適応】
- 妊娠34~36週である,切迫早産兆候がないこと.
- 前置胎盤や低置胎盤はなく,できれば胎盤が子宮前壁付着でないこと.
- 羊水過少,前期破水はなく,胎児の重症発育不全もないこと.
- 低身長,子宮奇形,胎位に影響していそうな筋腫や腺筋症などがないこと.
【外回転術の成功率及び合併症について】
- a .成功率については一般に約40%といわれていますが,施設や施行者により成功率は変動すると考えられます.
- b. 合併症として,常位胎盤早期剥離(0.18%),胎児心拍異常(50%前後),胎児死亡(0.06%),それ以外に不正性器出血などの様々な報告があり処置中及び処置後はこのような合併症に注意して管理します.
- c. 明らかなあるいは疑われる常位胎盤早期剥離や,胎児心拍異常が10分以上持続し,母体の体位を変換等しても効果が見られない場合は緊急帝王切開も行わせていただく可能性があります.
【当院の胎児外回転術の流れ】
- 1泊2日の入院となります。入院前に外来で術前検査(採血,胸部X線,心電図)を行い,帝王切開及び本処置の説明を受け,同意をいただきます.同意書は入院時に担当の看護師へ提出いただきます.
- 午前9時ごろ入院し,再度超音波検査での確認後に,子宮収縮抑制剤の点滴を開始,胎児心拍モニター(NST)の装着で胎児が元気なことを確認します.
- 分娩室で医師及び助産師の立ち合いのもとに外回転術を施行します.
- くも膜下麻酔(硬膜外カテも同時に留置)の下で施行することで,鎮痛及び外回転の成功率も上がる可能性,ならびに緊急帝王切開時に麻酔を速やかにおこなえるメリットもあり、麻酔処置施行15分後を目安に麻酔管理上問題ないのを確認して外回転処置を行います(ご本人の希望がなければ麻酔をしないで行うことも可能です。麻酔施行による金額的負担は3,000円前後です)。
- 外回転術が成功・不成功にかかわらず終了後は再度NSTを装着し,その日は再度時間を空けてN S T装着します.翌日朝に子宮収縮抑制剤は中止し,再度N S Tで胎児の元気さ及び超音波で胎位や臍帯の異常がないことを確認し退院となります.
- 諸費用は,入院管理費用,使用薬剤,技術料含めおよそ25,000円ほどかかります.外回転術が不成功の場合は,その技術料(8,000円)はご負担いただきません.
2024年度外回転施行データ
[外回転施行者数(胎位変換者数) 12名(11名)]
◎出生前検査について
出生前検査は胎児に何かしらの病気がないかを診断する検査で、主に染色体異常を対象とした遺伝学的検査と心臓や脳・消化器など臓器の異常を診断する形態学検査(超音波検査)があります。遺伝学検査にはその病気が存在しているかの確率を見る非確定的検査と診断を確定する確定検査があります(表1)。
当院では従来、母体血清マーカー検査(クワトロ検査)と羊水検査を行なっており、2023年11月にNIPT検査も導入開始しております。NIPT検査(無侵襲的出生前遺伝学的検査:non-invasive prenatal genetic testing)について下記に検査の流れを記載させていただきますが、わからないことがあれば産婦人科外来にご相談ください。
問い合わせ先:産婦人科外来
TEL:0268-22-1890(病院代表)

◎胎児超音波スクリーニング外来について
現現在、生まれてくる赤ちゃんの3~5%に少なからず先天性疾患(奇形,染色体異常など)があると言われています。そのうち、染色体異常によるものは25%程であり、他に単一遺伝子疾患、多因子遺伝、環境・催奇形因子などの影響が言われています。超音波検査で胎児の全ての異常が診断できるわけではありません、早期に細かくチェックすることで健やかに成長している確認を行なったり、異常がある際にご家族の心の準備や適切な治療が提供できるよう準備を行なったりすることができます。
当院では、2020年11月6日より超音波検査士により妊娠中期の胎児超音波スクリーニングを開始することとなりました。現在は当院にかかりつけの25歳以上の妊婦さんを対象とし、検査週数は妊娠22~24週頃を目安に予約をして検査させていただきます。状況により段階的に当院へかかりつけの全妊婦さんへも施行する予定ですが、年齢関わらず希望の患者様や他院に通院中で検査希望のある患者様への対応も開始していますのでご相談ください。
健康診断や人間ドッグと同じように胎児1人あたり自費診療(費用6,600円)となり、1人につき30分ぐらいかかりますので、予約や検査の詳しい内容は当センター産婦人科で説明をお受けください。
❉2024年度超音波スクリーニング検査施行数
総数 | 429件 |
双胎 | 12件 |
◎クワトロテスト❋について(予約制)
妊婦さまの血液検査から4つの成分を測定し、赤ちゃんの染色体の変化の一部、開放性神経管疾患(二分脊椎など)の確率を算出する検査です。
■対象…当院または他院❋❋で妊婦健診を受診されている方
■検査推奨時期…妊娠15~18週未満(週数等の条件が合えば、受診当日採血可)
■結果までの日数…10日程度
■費用…¥20, 000
❋この検査は年齢リスクを加味して確率を計算するので35歳以上の方には推奨しておりません。
❋❋事前に産婦人科外来へ連絡をいただきご相談ください。
◎NIPT検査(無侵襲的出生前遺伝学的検査:non-invasive prenatal genetic testing)について(予約制)
NIPTは、妊婦さまの血液検査から胎児由来の染色体量を測定し、赤ちゃんの21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)の可能性を調べる検査です。確定検査ではありませんが、従来の検査であるクワトロ検査などに比べて精度が高い検査です。
この検査を希望または検討中の方は、「NIPTカウンセリング外来〈予約制〉」の受診が事前に必要になります。受診は検査可能時期(妊娠9週)前から可能ですが、妊娠16週 までには受診してください(16週以降は要相談)。
►NIPTカウンセリング外来
■対象…当院または他院で妊婦健診を受診されている方
また胎児の染色体(13,18,21トリソミー)についての検査を希望し、かつ下記(1)~(5)の
いずれかに該当する妊婦さんが検査を受ける対象になりますが、遺伝カウンセリングを
受けても上記の胎児染色体数的異常に対して不安が解消されない場合も検査の対象と
なります。
■費用(自費診療)…初回¥10,400(初診料+カウンセリング費用,税抜き)
…2回目以降¥10,400(再診料,税抜き)
■出生前カウンセリング外来の日時
木曜日 | 15:00 16:00 16:30(毎週ですが変更の場合あり) |
【NIPT検査までの流れ】
■受診方法
✳当院で妊婦健診受診中の方
産婦人科医または外来の看護師に申し出るか、または産婦人科外来にお電話にて
NIPTカウンセリング外来をご予約ください。
✳他院で妊婦健診受診中の方
当院の産婦人科外来にお電話にてNIPTカウンセリング外来をご予約ください。
■受診までの事前準備
①検査来院前に事前学習動画(GeneTech 社提供)を視聴してください。
URL:https://www.youtube.com/watch?v=P1ykvOM68KY
②NIPTをご希望の方は、こちらの冊子もご覧ください
URL:https://jams-prenatal.jp/file/nipt_setsumei_sasshi.pdf
③問診票・同意書の記入 ※プリンターをお持ちでない場合は来院当日にお渡しいたします。
(当日のご主人またはパートナーのご参加が難しい場合はサイン済みの同意書を当日持参)
✽NIPT希望者用書類一式はこちら
✽✽他院で妊婦健診受診中の方は当院問診表も記載こちら
④陽性だった場合にどうするかなど事前にご夫婦やパートナーでよく話し合っておいてください。
►NIPT検査
■対象…上記NIPTカウンセリング外来受診の方
■検査推奨時期…妊娠9~16週未満(採血はカウンセリング後に予約で採血施行)
■結果までの日数…11日程度
■費用…¥93, 620(税抜き)
■検査結果の扱いに関して
「陽性または判定保留」の場合、羊水検査が診断として必要と判断される際には現在のところ
基幹病院である信州大学遺伝子医療研究センターに紹介させていただくことになりますので
ご了承ください。「陽性」の場合、当院で羊水検査を施行しますが自己負担は生じません。
▶当院は日本医学会によりNIPTを実施する連携施設として認証を受けています。必要に応じ、
基幹病院である信州大学遺伝子医療研究センターに(松本市)へ紹介させていただくことが
あります。詳細はバナーをクリックしてください。
❉2024年度染色体検査施行数
NIPT | 102件 |
クワトロマーカー | 23件 |
羊水検査 | 7件 |
絨毛検査 | 1件 |
問い合わせ先:産婦人科外来
TEL:0268-22-1890(病院代表)
◎子宮頸癌に対するH P Vワクチン接種に関して
子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンと接種で予防できるがんです。世界では子宮頸がんの排除に向けて、15歳までにワクチン接種率90%を目指した活動が始まっています。一方、日本では平成25年に定期接種化されたものの、わずか2ヶ月後に厚生労働省が接種勧奨を差し控えるという発表をしました。その後も定期接種は継続し、小学6年生~高校1年生相当の女子は公費(無料)で接種できるにもかかわらず、かつて70%だった接種率は0%近くまで激減してしまいました(図1)。

この間、海外ではHPV感染率の低下や前がん病変の減少はもちろんのこと、がん罹患率の低下についても報告されるようになりました。子宮頸がんの90%以上の予防が期待される9価ワクチンが主流になりつつあり、男子への接種の承認も広がっています。
日本のデーターでは子宮頸がんの40~50%はHPV16型、20~30%はHPV18型が原因であり、HPV52,58,31,33型がこれに続いて子宮頸がんから検出されています。HPV16・18型感染がある女性は感染のない女性の200~400倍子宮頸がんになる危険度が高く、特に20~40歳代で発症する若い世代の原因になっているのがわかっています。
また世界保健機構(WHO)が世界中の最新データを継続的に解析し、H P Vワクチンの安全性を示してきました。日本においても、厚生労働省の調査でワクチン接種後の「多様な症状」とワクチンとの因果関係は証明されませんでした。名古屋市で行われた3万人規模のアンケート調査でも同様な結論でした。また、国民が不安に思うこれらの症状に対する診療体制が整い、安心して接種できる環境ができています。そして、接種率が70%以上だった年代の女子では、有意なHPV感染率の低下や細胞診異常の減少が明らかとなりました。
当院でも、今後は子宮頸がんの撲滅に対し可能な限り定期接種であるHPVワクチン接種に対し、希望のあるワクチン投与対象者の方々にその場を提供していきたいと考えています。2013年4月から予防接種法に基づき定期接種となったため、小学校6年生~高校1年生相当の女子は公費(無料)で接種することができます。2020年7月には子宮頸がんの90%以上が予防できると推定されている9価(HPV 16,18,31,33,45,52,58,6,11)ワクチンの製造販売承認が日本でも認められ、2021年4月から当院での接種も可能となりましたが、実際に公費での接種が可能になるのは2022年以降と考えられます。
また、15歳~45歳までのHPVワクチン未接種の女性に対しても子宮頸がんの予防効果を認めているため、接種希望の患者さまにはワクチンの提供ができます。
将来的には海外で有効性が認められている、中咽頭癌・陰茎がん・肛門がんなど男性のHPVウイルスが関連していると言われる疾患の予防のために男子への接種も広がっていく可能性があります。
現在当院では4価(HPV 16,18,6,11)または9価ワクチンが図2の投与方法で行われています。ワクチン接種希望の方は、産婦人科または小児科外来へお問い合わせください。
TEL:0268-22-1890(病院代表)

❉上田市で公費対象のHPVワクチン接種希望のかたへ
・対象の年齢の方は下記の場所で公費の券を受け取り(郵送または窓口で直接)、当院の外来へ持参して頂きワクチン接種を行う流れとなります。
担当窓口(問い合わせ場所)
:上田市健康推進課 保健予防担当
〒386-0012 長野県上田市中央6丁目5番39号
Mail:kenko@city.ueda.nagano.jp Tel:0268-28-7124 Fax:0268-23-5119
・子宮頸がん予防ワクチンの接種後に生じた症状の診療に係る長野県内の協力機関は次のとおりです。
(1) 信州大学医学部附属病院神経内科:0263-37-2755
(2) 佐久総合病院神経内科(高校生以上に限る):0267-82-3131
参考情報
- 日本産婦人科学会ホームページ「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のため」など http://www.jsog.or.jp/
- 日本産婦人科医会ホームページ https://www.jaog.or.jp/
- YOKOHAMA HPV PROJECTホームページ http://kanagawacc.jp/
- 子宮頸がん予防ワクチンQ&A/厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_qa.html
◎妊娠中のワクチン接種に関して
1.RSウイルス母子免疫ワクチン(アブリスボ)の任意接種開始について
(RSウイルス感染症対策の重要性)
RSウイルス感染症は5類感染症に指定されており、世界中に広く分布しています。生後1歳までに50%以上が、2歳までにほぼ100%が初感染します。乳幼児における肺炎の約50%、細気管支炎の50~90%がRSウイルス感染症によるとされています。病状は感冒様症状から下気道感染に至るまで様々ですが、特に生後6ヶ月未満に感染すると重症化することが示されています。日本では、毎年約12万~14万人の2未満の2歳未満の乳幼児がRSウイルス感染症と診断され、約1/4(およそ3万人)が入院を必要とすると推定さてされていますが、有効な治療法はありません。
(日本小児科学会HP参照)
https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=559
動画 RSウイルス編:https://drive.google.com/file/d/1HfGzH-anDXCOn6cLF8nIPRUd8WOAmI3_/view?usp=drive_web
この度、妊婦さんにRSウイルス母子免疫ワクチン接種をすることで、母体のRSウイルスに対する中和交代を高め、胎盤を通じて母体から胎児へ後退が移行することで、生後のRSウイルスの下気道疾患を予防することが示されました。そのため、当院でも希望のある方には接種を開始しました。
○適応妊娠週数
妊娠24週~36週の妊婦さん:1回5mlを筋肉注射
(効果が高いという理由での接種推奨週数 妊娠28週~36週。ただし、接種後早産された場合は効果が未知数です)
○効果
臨床試験(国際共同第Ⅲ相試験)においてワクチンを使用した場合、重度のRSウイルス関連下気道感染症を、生後90日で81.8%、生後180日で69.4%予防できました。医療機関に受診が必要となるRSウイルス関連下気道感染症に対して同様に、生後90日で57.1%、生後180日で51.3%の有効性が示されています。
○有害事象
反応原生の注射部位疼痛などは、ワクチン群が多かったものの、ほとんどが軽度から中等度でした。また、有害事象及び重篤な有害事象はワクチン群とプラセボ群で同程度との報告があります。
○費用
ワクチン費用:30,250円(保険は使えません)
◎風疹ワクチン/風疹・麻疹ワクチン接種に関して
風しんは、風しんウイルスによって引き起こされる急性の発疹性感染症で、風しんウイルスへの免疫がない集団において、1人の風しん患者から5~7人にうつす強い感染力を有します。風しんウイルスの感染経路は、飛沫感染で、ヒトからヒトへ感染が伝播します。
症状は、不顕性感染(感染症を示さない)から、重篤な合併症併発まで幅広く、特に成人で発症した場合、高熱や発疹が長く続いたり、関節痛を認めたりするなど、小児より重篤化することがあります。また、脳炎や血小板減少性紫斑病を合併するなど、入院加療を要することもあるため、決して軽視はできない疾患です。
風しんウイルスに対する免疫が不十分な妊娠20週頃までの妊婦が風しんウイルスに感染すると、先天性風しん症候群の子どもが生まれてくる可能性が高くなります。感染すると約2~3週間後に発熱や発疹、リンパ節の腫れなどの症状が現れます。風しんの症状は、子どもでは比較的軽いのですが、まれに脳炎、血小板減少性紫斑病などの合併症が、2,000人~5,000人に1人くらいの割合で発症することがあります。大人がかかると、発熱や発疹の期間が子どもに比べて長く、関節痛がひどいことが多いとされています。
また、発疹の出る前後約1週間は人に感染させる可能性があります。
風しんウイルスに対する免疫が不十分な妊娠20週頃までの女性が風しんウイルスに感染すると、眼や心臓、耳等に障害を持つ(先天性風しん症候群)子どもが出生することがあります。(妊娠1ヶ月でかかった場合50%以上、妊娠2ヶ月の場合は35%などとされています。)妊娠中の女性は予防接種を受けられないため、特に流行地域においては、抗体を持たない又は抗体価の低い妊婦は、風しんが発生している地域では、可能な限り不要不急の外出を避けていただき、やむを得ず外出する際には可能な限り人混みを避けていただくなど、風しんにかからないように注意してください。また、妊婦の周りにいる人(妊婦の夫、子ども、その他の同居家族等)は、風しんウイルスに感染しないように予防に努めてください。
○適応時期
産後いつからでも:1回0.5mlを皮下注射
(風しん抗体価がHI法で16倍以下の方が対象ですが、それ以上の方が接種を受けても差支えはありません。)
MR(麻疹風疹)ワクチン接種が可能であれば勧められていますが、現在のところ製薬会社からの出荷停止にて受けることができません。供給が安定し接種できる見込みがたった時にはあらためて広報させていただきます。(2025年6月現在)
○効果
抗体陰性(HI<8倍)の方は抗体獲得率100%でした。抵抗体価(8倍または16倍)の方については、1ヶ月健診では高い有効率がみられたものの、次の妊娠で受診した際に測定すると、接種前の値の4倍以上の抗体価を保つ方は20%程度でした。一旦は抗体価が上昇するので全く無効なわけではないと考えています。現在の幼児が受けている2回接種を我々大人の世代は受けていないので、その2回目を受けるつもりで抵抗体価の方も受けていただきたいと思います。
○有害事象
1回目のワクチン接種後の副反応として最も多くみられるのが発熱です。発生頻度は接種後1週間前後が最も高く、接種して2週間以内に約13%でみられます。発疹は接種後1週間前後に数%程度、アレルギー反応としての蕁麻疹が約3%、また発熱に伴うけいれんが約0.3%にみられます。2回目の接種では接種局所の反応がみられる場合がありますが、発熱、発疹の頻度は極めて低くなります。稀な副反応として、脳炎・脳症が100万~150万人に1人以下の頻度で報告されていますが、ワクチンとの因果関係が明らかでない場合も含まれています。
○費用
風疹ワクチン費用:6,500円(保険は使えません)
麻疹・風疹ワクチン費用:10,000円(保険は使えません)
◎百日咳ワクチン接種に関して
乳児(とくに生後6ヶ月未満)が百日咳にかかると、重症化し時に致死的となることがあります。そのため、諸外国では妊婦(妊娠27週~36週)に対してTdap(成人用三種混合ワクチン)の接種を推奨しています。妊婦に接種することで、乳児を囲む家族(父・兄弟姉妹など)も免疫をつけておくことが重症ですが、日本ではTdapは未承認ワクチンのため輸入ワクチンとして扱う医療機関で接種するしかないのが現状です。また日本でも成人用三種混合ワクチン(トリビック🄬)が日本で承認されています。成人や小児へ1回接種することで、百日咳に対する免疫が再獲得できます。
2025年に入り全国的に百日咳の流行が拡大しており、乳児を中心に死亡例を含む重症例が報告されています。さらに、薬剤耐性の問題もあり、有効な治療手段が限られる中、各学界から、百日咳含有ワクチンの接種を改めて推奨する提言がなされています。
動画 百日咳編:https://drive.google.com/file/d/1yPInGh64wU6nMhekvIVbB-QKxTMfxQRN/view?usp=drive_web
○適応妊娠週数
妊娠27週~36週の妊婦さん:1回0.5mlを皮下注射
(ただし、接種後早産された場合は効果が未知数です。)
○効果
百日せきは80~90%の予防効果があり、重症化予防に特に有効です。ワクチンは5~7年で効果が減弱するため、追加接種の検討が必要です。
○有害事象
注射部位の違和感、発赤、疼痛が生じることがあります。まれに発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛を認めます。ごくまれにアナフィラキシーショックを起こします。
○費用
百日咳ワクチン費用:5,500円(保険は使えません)
ワクチン接種の予約に関して
ご希望のある方は、外来スタッフ(医師、看護師等)にお問い合わせください。なお、接種には予約が必要です。当院受診中の方または他院にて健診中で接種のみ希望の方もわからないことがあれば、当院産婦人科外来にお問い合わせください。
産婦人科からのお知らせ
予約等につきましては、下記までお問い合わせください。
紹介状をお持ちの場合:地域医療連携室 電話受付時間/平日8:30~17:00
紹介状をお持ちではない場合:産婦人科外来 電話受付時間/平日15:00~17:00
いずれもTEL:0268-22-1890
当院での分娩をご予定の皆さんへ
【立ち合い分娩について】
分娩室での立ち合いについては、以下の立ち合いの条件を満たした場合のみ可とします。
- 原則、夫・パートナーあるいは身内の方お一人のみ
- 陣痛が来てから分娩までの期間に限る
- マスクを可能な限り着用し、手洗い・手指消毒を行うこと
【母親学級について】
母親学級は人数の制限並びに内容をできるだけ簡潔にわかりやすく行わせていただいます。
現在は、妊娠中1回可能な限り参加していただいておりますが、状況により個別に対応させていただくこともあります。それ以外、不安なことやご質問があれば随時ご相談ください。
【産後ケア入院のお知らせ】
出産後のお母さんと赤ちゃんの安心・安全を提供します。
産後ケアリーフレット(PDF:468KB)
診療実績
産科統計
2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
分娩数 | 304 | 357 | 393 | 407 | 425 | 417 | 501 | 661 | 650 | 661 |
出生数 | 297 | 353 | 387 | 399 | 422 | 420 | 504 | 644 | 643 | 661 |
単胎 | 291 | 347 | 379 | 394 | 417 | 407 | 492 | 652 | 646 | 650 |
双胎 | 13 | 7 | 14 | 5 | 8 | 10 | 9 | 9 | 4 | 11 |
死産 | 7 | 4 | 6 | 8 | 3 | 7 | 6 | 17 | 11 | 11 |
年度 | 全分娩数 | 正常経膣 | 帝王切開 | 鉗子 | 吸引 | 無痛併用 |
2015年 | 304 | 163(53.6%) | 123(40.5%) | 18(5.9%) | 0 | 13(4.3%) |
2016年 | 357 | 211(59.3%) | 119(33.3%) | 26(7.2%) | 1(0.3%) | 19(5.3%) |
2017年 | 393 | 222(56.1%) | 135(34.4%) | 34(8.7%) | 2(0.5%) | 27(6.9%) |
2018年 | 407 | 234(57.4%) | 142(34.9%) | 30(7.3%) | 1(0.2%) | 30(7.3%) |
2019年 | 425 | 272(64.3%) | 116(27.2%) | 37(8.7%) | 0 | 37(8.7%) |
2020年 | 417 | 275(65.9%) | 119(28.5%) | 23(5.5%) | 0 | 69(16.5%) |
2021年 | 501 | 319(63.8%) | 142(28.3%) | 34(6.8%) | 6(1.2%) | 134(26.7%) |
2022年 | 661 | 410(62.0%) | 169(25.6%) | 66(10%) | 15(2.2%) | 238(36.0%) |
2023年 | 650 | 419(64%) | 150(23%) | 79(12%) | 2(0.3%) | 258(40%) |
2024年 | 661 | 440(67%) | 155(23%) | 48(7%) | 18(3%) | 302(46%) |
反復帝王切開 | 胎児心拍異常 | 双胎妊娠 | 胎位/臍帯異常 | 前置/低置胎盤 |
58 | 12 | 11 | 19 | 3 |
妊娠高血圧症候群 | 常位胎盤早期剥離 | 分娩停止/CPD | 既往子宮手術 | その他 |
4 | 1 | 18 | 5 | 1 |
<36週 | 36週~<40週 | 40週~<42週 |
15 | 376 | 129 |
無痛施行者(人) | 初産 | 予定施行者 | 予定外施行者(内初産数) | 正常経膣分娩数 | 鉗子/吸引分娩数 | 帝王切開数 |
302 | 192(64%) | 260(86%) | 42(14%) | 209(69%) | 68(23%) | 25(8%) |
婦人科統計(手術は重複症例あり)
手術 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 |
単純子宮全摘(付属器切除含む) | 16 | 26 | 9 | 10 | 14 | 11 | 9 | 6 | 8 | 7 |
付属器切除(開腹) | 1 | 5 | 2 | 2 | 9 | 3 | 4 | 7 | 4 | 4 |
悪性開腹手術 | 14 | 18 | 9 | 20 | 24 | 20 | 22 | 20 | 30 | 15 |
嚢腫核出 | 1 | 1 | 0 | 4 | 0 | 0 | 1 | 2 | 0 | 2 |
筋腫核出術 | 2 | 3 | 4 | 0 | 3 | 3 | 5 | 5 | 2 | 3 |
その他の開腹手術 | 2 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 1 | 1 | 1 | 0 |
膣式子宮全摘術、臓器脱手術 | 3 | 3 | 2 | 5 | 3 | 1 | 2 | 4 | 5 | 5 |
腹腔鏡手術 | ||||||||||
嚢腫核出(LC)(妊娠中含む) | 15 | 12 | 14 | 26 | 17 | 21 | 17 | 20 | 19 | 10 |
付属器切除 | 15 | 16 | 28 | 24 | 21 | 23 | 29 | 23 | 21 | 16 |
筋腫核出(LM) | 1 | 6 | 5 | 7 | 9 | 7 | 6 | 14 | 9 | 12 |
腹腔鏡補助下筋腫核出(LAM) | 1 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 |
卵管切除(外妊は除く) | 3 | 4 | 4 | 0 | 1 | 0 | 1 | 2 | 27 | 17 |
子宮全摘(TLH) | 2 | 17 | 18 | 28 | 33 | 30 | 38 | 57 | 3 | 1 |
腹腔鏡下子宮外妊娠手術 | 13 | 9 | 11 | 6 | 10 | 7 | 6 | 4 | 9 | 4 |
他腹腔鏡手術 | 2 | 3 | 7 | 3* | 0 | 1 | 2 | |||
子宮鏡下手術(TCR) | 3 | 13 | 12 | 8 | 13 | 10 | 13 | 9 | 18 | 9 |
円錐切除(Leep) | 14 | 29 | 22 | 20 | 33 | 30 | 21 | 34 | 33 | 24 |
Laser vapolization(コンジローマ焼灼) | 1 | 0 | 6 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
流産手術 | 20 | 15 | 10 | 16 | 31 | 31 | 23 | 35 | 25 | 29 |
胞状奇胎(AUS) | 4 | 0 | 2 | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 |
その他の膣式手術 | 5 | 6 | 1 | 9 | 5 | 12 | 6 | 4 | 8 | 8 |
127件 | 167件 | 190件 | 179件 | 223件 | 218件 | 206件 | 253件 | 220件 | 171件 |
2024年度 緊急手術;子宮外妊娠;4件/嚢腫捻転および卵巣腫瘍破裂(疑い含め);6件
PID/嚢腫感染;2件 :合計12件
担当医紹介(常勤医師)

■松村 英祥
(まつむら ひでよし)
地域医療連携室長
平成11年卒
専門領域
- 産科全般
- 産科救急
- 婦人科一般
専門医等
- 日本産科婦人科学会専門医・指導医
- 日本周産期・新生児学会認定
- 周産期専門医・指導医
- 日本超音波医学会 超音波専門医・指導医
- 日本医師会認定 産業医
- 臨床研修指導医
- 埼玉医科大学総合医療センター非常勤講師
■島袋 麻希子
(しまぶくろ まきこ)
平成26年卒
専門領域
- 周産期
- 産婦人科一般
専門医等
- 日本産科婦人科学会産婦人科専門医
- 日本周産期・新生児医学会専門医(母体・胎児)
- 日本母体救命システムベーシックコースインストラクター
- 新生児蘇生法(NCPR)認定
■井手 里紗
(いで りさ)
専門領域
- 産科・婦人科
専門医等
■宮下 大輔
(みやした だいすけ)
平成29年卒
専門領域
- 産科・婦人科
専門医等
- 産婦人科専門医
- 母体保護法指定医
■長谷川 崇
(はせがわ たかし)
専門領域
- 産婦人科