卵巣がんの診断・治療についてこのページを印刷する - 卵巣がんの診断・治療について

診断

【臨床症状】
卵巣がんは以前から silent disease と言われており、診断された時にはすでに進行癌であることが多いとされます。腫瘍が小さい場合でも婦人科検診などで早期に発見されることもありますが、卵巣が腫れている状態であっても、かなり大きくなるまで無症状のことが多く、進行して発見されることが多いです。大きくなると腹壁から自分の手で腫瘍を触れたり、あるいは腫瘍による圧迫症状がみられるようになります。腹水を伴うと、その量に応じた腹部の腫大と腹部膨満感が出現します。腹水が増量し胸水も認められるようになると、呼吸苦が出現します。胸腹水は良性卵巣腫瘍でも発生しますが、悪性の場合により多く見られます。卵巣腫瘍は悪性、良性に関わらず、捻れたり(卵巣腫瘍茎捻転)、破裂したりすることがあり、この場合は激痛を伴います。

【検査】
診断は経腟または経腹超音波検査で悪性度や進行度を推定し、MRI検査、CT検査を行うことでより術前診断を行います。CA125,CA19-9などの腫瘍マーカーも参考にすることが多いです。

治療

治療の第一選択は手術療法になります。手術で卵巣悪性腫瘍の診断を行い、最大限の腫瘍減量を図ることにより、予後の改善を目指します。当院での手術は腹式 単純子宮全摘出術+両側付属器摘出術+大網摘出術が基本です。さらに骨盤リンパ節郭清術および傍大動脈リンパ節郭清術の追加が考慮されます。妊娠の希望がある方で、適応がある場合は妊孕性温存手術を行います。術前に根治手術が難しいと判断された症例については、術前化学療法を行ったあとに根治手術を行います。 卵巣がんには、主として4つの組織型があり、それぞれ抗がん剤の効果が異なります。漿液性がん、類内膜がん、明細胞がん、粘液性がんの4つですが、前2者は抗がん剤がよく効き(特に漿液性がん)、後2者は抗がん剤が効きにくく、使用される抗がん剤もこれらの組織型によって決定される場合が多くあります。頻度的には、漿液性がん、明細胞がん、類内膜がん、粘液性がんの順とされています。卵巣がんの組織型に関して最も重要なことは、抗がん剤のよく効くタイプでは拡大手術を施行しなくても、その後の治療を抗がん剤に期待できるということです。逆に、抗がん剤が効きにくいタイプでは、手術の機会に可能な限りの完全切除が必要となります。